【特集】どうなるベトナム2019 !? 製造拠点としての魅力と日系企業の進出④ | 取材協力・監修:JETRO(ジェトロ)ハノイ・ホーチミン事務所

週刊Vetter「ベトナムガイドブック2019年」に掲載中の取材記事を大公開。今回は、ジェトロハノイ事務所の床 浩充氏と、ジェトロホーチミン事務所の安池 久美氏に取材協力をお願いし、日系企業を含む海外からの投資先としてのベトナムの優位性と今後の展開についてまとめました。

投資先としてベトナムが優位である点

ベトナムは東南アジア主要国で最高水準の成長を続け、外資を呼び込んでいます。特に進出している日系企業の数はASEAN加盟10カ国のうち、タイ、シンガポールに次いでいます。 
 
なぜベトナムが投資先として選ばれるのかということを考えると、いくつかの要因があげられます。まずは、労働力としての質が高く、確保がしやすいという点。現在のベトナムの人口は1億人弱、中でも29歳以下が40%以上を占めるという点です。
 
ただし、1988年以降政府の推めてきた人口抑制策「ふたりっ子政策」により、現在の合計特殊出生率は1.81人(2017年時点)となっており、緩やかに少子高齢化が進んでいます。しかしながら現在の時点ではまだ生産人口の割合が高く、経済成長率の高さも将来の市場性も期待されています。
 
民族はキン族が人口の約90%を占め、宗教は大乗仏教が約80%ということから民族や宗教による分断が起こりにくいという点もカントリーリスクが低い点もメリットです。国民性は、勤勉で、手先が器用であることから縫製業を含む労働集約型産業の拠点となってきました。
 
さらに、少子化が進むにつれ、少ない子どもにお金をかけるという消費傾向が強くなり、高等教育の進学率も上昇しています。その世代が労働市場に入ってきており、とくにIT系企業などの労働力として期待されています。また、大規模な自然災害が少ないという立地面での安定性も好材料とみられています。
 
近年では、トランプ米政権による対中制裁関税の発動を受け、縫製業を中心に中国からベトナムに生産拠点を移す動きも目立っていますが、こうしたメリットをとらえていると見てよいでしょう。また、そのような中で、日本も同様に対米中関係について課題を持つことなどから日本とベトナムの関係性がかつてないほど強まっているのも見落とせないポイントです。

日本からの投資の推移と特徴

ここ数年、外国からの投資は右肩上がりで増え続け、2017〜18年には大型案件が含まれています。
 
2018年の対ベトナム外国直接投資は255億ドル、認可額では日本が全体の31%を占め、国別には2017年から連続して一位、韓国、シンガポールがこれに続きますが、認可件数は韓国が一位であり、日本はその半分以下となっています(コラム参照)。
 
近年の日本からの投資について検証すると、一つは、これまで主流であった製造業に対する新規投資が、サプライヤーも含めひと段落してきたということが言えます。しかし、継続している既存のプロジェクトに対する拡張投資は伸びており、新規案件もハノイやホーチミンから少し離れた地域への投資が増えています。
 
次に2016年から2017年にかけての飛躍的な伸びが特徴的ですが、これは石油精製や火力発電に関する大型プロジェクトへの投資案件が影響しています。2017年の新規直接投資額を業種別にみると、「ライフライン」が製造業を抜いて一位になっているのはそのためです。
 
さらに2017年から2018年にかけては不動産業への投資の伸びが著しいことが特徴です。これはハノイで進められている住友商事による「スマートシティプロジェクト」の事業に対する投資であり、認可件数は過去最高を記録、金額も前年に次ぐものとなっています。(表3)

投資先がハノイ、ホーチミンから地方に拡大

従来、ベトナムにおける日系企業は製造業が中心でしたが、近年は小売業やIT、教育や医療関連のサービス業といった非製造業の進出も増えています。
 
これはベトナムの人口増加と経済成長から市場の可能性を見出している点と、ベトナム人の人材が育ってきているため従業員を確保しやすくなったことが要因と考えられます。
 
特に後者に関しては、IT関連企業が日本語を使えるベトナム人を雇用する傾向が目立っているようです。ベトナム人の教育レベルは他の近隣諸国に比べて高く、高校までの就学率は50%、大学進学も近年は30%ほどになっています。
 
これからの課題としては、専門知識や日本語の理解レベルにおいて企業側のニーズを満たす人材が育ってきたと言われる一方で、高学歴の従業員の仕事の質が必ずしも高いわけではないという声も聞かれるため、そのギャップをどう埋めるかということ。
 
それと同時に、日系企業が抱えるリスクや経営上の問題として「人件費の高騰」が指摘されるようになったということです。しかしベトナムの人件費が上がったからといって、ラオスやカンボジア、ミャンマーといった周辺の国に拠点を移すには、インフラや手続き等の面でまだたくさんの問題が残るため、すぐに移管が進むことはないでしょう。
 
それよりも、近年ではベトナムの地方都市への投資に関心が高まっており、工業団地等の整備も進められています。特に、ダナンを中心とする中部地域は、ホーチミンやハノイでの投資が一巡した現在、海外企業の進出先として注目されています。こうした現象はベトナムが単にモノを作るだけの国から、自国で作った製品を自ら売り、さらにそれらの購買先となる国へと成長していることを示すものだといえるでしょう。

韓国サムスングループ、ベトナムの全体輸出額の25%を占める

2017年は製造業の伸びが著しく、成長率は14.4%となっていますが、これは2009年から韓国のサムスングループの関連会社がベトナム国内で携帯電話の生産に乗り出したことに起因します。
 
近年のベトナムの輸出品目を見ると、「電話機・同部品」が突出しており、これは同グループとその関連企業、サプライヤーのものと見られます。同社関連輸出額を輸出総額における構成比から見ると2018年には25%にまで達する見込みです。
 
さらに同社は2017年、ホーチミンに研究開発拠点も開設し、今後は同国において携帯電話だけでなく家電製品の生産にも力を入れるとしています。サムスングループはインドにも大規模な生産拠点を持っており、ベトナムからインドに比重が傾くのではないかという懸念をされることもありますが、同社ではインドの拠点はあくまでも国内市場向けだとしています。

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