【特集】どうなるベトナム2019 !? ベトナムの消費動向② | 取材協力・監修:JETRO(ジェトロ)ハノイ・ホーチミン事務所

週刊Vetter「ベトナムガイドブック2019年」に掲載中の取材記事を大公開。今回は、ジェトロハノイ事務所の床 浩充氏と、ジェトロホーチミン事務所の安池 久美氏に取材協力をお願いし、ベトナム国内における消費市場の成長と成熟、そして現状とベトナムの将来像についてまとめました。

南北で違う文化と経済志向

南北1,650キロに伸びている地形からベトナムの南部と北部では、気候的にも文化的にも経済的にもさまざまな面で異なった特徴があります。北部に位置する首都ハノイは「政治の中心」、南部の商業都市ホーチミンは「経済の中心」とされています。
 
まず、ハノイを中心とする北部は温帯性の気候であり、四季があり、地域性としては辛抱強く伝統を重んじる人が多いと言われています。そのため消費よりも貯蓄志向。ただし、高級品やブランド品に対する購買意欲は高く、価格の高いものは南部よりも売れるという傾向もあるようです。
 
こうした購買を支えているのは政府関係者を中心とする富裕層であり、一般市民にとって消費経済はまだ身近なものではなく、購買層は育っていません。一方、ホーチミンを中心とする南部は熱帯気候で、雨季と乾季の二季。おおらかで楽観的な住民が多く、消費志向も流行に敏感で新しいもの好きだと言われています。
 
ベトナムの全国平均と比較してみても、ホーチミンの方がGDPも成長率も平均賃金も突出しており、タイと同レベルです。従って南部の方が中間層による市場経済がマーケットの規模も大きく、成熟しています。そのため海外からの投資もまずホーチミンを中心とした南部から検討されることが多いようです。マーケットの傾向としては、リーズナブルな商品が好まれる一方で、流行を意識した消費行動が見られます。

さらに今後は中部地方にも注目

従来は、ベトナムの主要都市といえばこの二つでしたが、今後注目されるのは中部地方です。この地域は台風や洪水の被害が多いため、長い間国内経済の後発地となっていましたが、今や世界有数のリゾート地にもなったダナンを中心に、フエやホイアン、ミーソンなど世界遺産に指定された観光資源に恵まれています。
 
ベトナム政府もまた、国土の均衡的な発展を目指すなかで、これまでのハノイ、ホーチミンだけでなく中部ベトナムの投資環境整備にも力を入れるようになりました。例えば、中部ベトナムの中心的都市であるダナンでは、投資促進センターを設立し投資窓口の一元化を進めてきました。
 
賃金と所得水準が上がったホーチミンやハノイでの投資が一巡した現在、質素倹約を旨とする勤勉な人が多いとされる地域性からも中部に高い関心が寄せられています。2017年にはAPECサミットがダナンで開催され、世界中の注目を浴びています。

ベトナム人消費者の購買力

中間層の所得とされる5千ドル以上3万5千ドル未満の可処分所得のある世帯の割合は、2015年で36%です。しかも先述したように、ホーチミン周辺とその他の地域では格差があるため、現状では消費市場としての規模はそれほど大きくありません。しかしながら、市場は賃金の上昇は続いているため、このまま行けば2017年にはその割合が6割以上になるという試算もあります。
 
それを示すかのように個人消費額は右肩上がりで伸びてはいますが、ベトナムはまだ「パパママショップ」と呼ばれる家族経営の個人商店、公設市場、露店などでの取引が8割以上といわれています(*)。
 
また、自動車の販売台数も2012年以降2017年までうなぎのぼりで上昇しています。関税撤廃を目前とした2017年には買い控えが起こっていますが、2018年の売り上げは前年比5.8%増の28万8千台となっています。2015年のベトナムのGDPは2,385ドルでした。これは日本の1970年前後に相当するといわれています。
 
当時の日本は高度経済成長期と呼ばれ、カラーテレビ、クーラー、自家用車などの消費財が普及し始めた時代です。1970年には大阪万博が開かれています。 一人当たりのGDPが3,000ドルを超えるとモータリゼーションが始まり、消費財の販売が急激に増えるといわれています。
 
実際に2015年の時点でホーチミン市のGDPは5,318ドル、ハノイ市は3,553ドルとなっており、街中では自動車の急増を肌で感じることができます。またベトナムの経済成長率から鑑みても、今後の市場の拡大が期待されています。

(*)モダントレード比率という商業施設での取引の割合を表す数値では、マレーシア70、中国59、フィリピン57、タイ54、インドネシア42、ベトナム11、インド8となっている。

ベトナム初の国産車ビンファスト発売

2019年のベトナム経済を見る上で外せないのは、ベトナム初の国産車であるビンファスト(VinFast)の発売です。ビンファスト社は地場系コングロマリットのビングループ(VIC)傘下であり、2017年9月に自動車製造への参入を発表しました。
 
CEOをはじめとする同社の経営陣には、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)から人材を引き入れ、国産車第一号のモデルにはドイツのBMWの技術、イタリアのジウジアーロやピニンファリーナによるデザイン等を導入。
 
企画やベースデザインなどはベトナム主導で行い、最終的なデザインは数十万人の消費者からの人気投票によって選ばれたそうです。
 
2018年10月にはパリで開催されたモーターショーには新型車「LUX」の4ドアセダンとSUV(多目的スポーツ車)二つのモデルが発表され、サッカーのスター選手であるデビッド・ベッカム氏をゲストに迎えたプレスカンファレンスは話題となりました。今年9月に販売開始されるのは、この2モデルに加えて、オペルの「カール・ロックス」をベースにした小型車「ファディル」と電動バイク「クララ」です。

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