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【特集】どうなるベトナム2019 !? マクロ経済から見た現状と将来像? | 取材協力・監修:JETRO(ジェトロ)ハノイ・ホーチミン事務所

週刊Vetter「ベトナムガイドブック2019年」に掲載中の取材記事を大公開。今回は、ジェトロハノイ事務所の床 浩充氏と、ジェトロホーチミン事務所の安池 久美氏に取材協力をお願いし、ベトナム経済の発展の経緯と現在の実情、そしてベトナムの将来像についてまとめました。

一党制が支える経済発展

政治的にはベトナム共産党による一党制の社会主義国のベトナムは、1986年以降「ドイモイ(刷新)」と呼ばれる社会主義指向に市場経済を取り入れる政策が執られています。
 
ベトナムにおける一党体制の政治は、現状では安定しており、政権が変わるごとに経済政策が変わり、そのことによって市場の物流や手続きに混乱が起こる他の東南アジア諸国に比べ、経済発展の下支えになっていると言えます。
 
2011年に発表された「新10カ年国家戦略」によると、ベトナム政府は早期に達成すべき項目として「市場経済制度の整備 」「平等な競争環境の創出 」「 人材の育成 」「 インフラ整備 」「 工業国化 」「1人当たりGDPの増加」の目標を掲げています。
 
このうちGDPについては2020年までに3,000~3,200 ドルに引き上げられており、2017年のGDPは2,385ドル(ホーチミンは5,492ドル)となっています
 
公式統計の数字は、市中の小規模な民間企業や個人企業の経済活動までとらえきれていないため、ベトナムの経済規模は発表されている数値よりも大きいと言われています。
 
特に都市部においては一人当たりのGDPが小さいわりには生活水準はそれほど低くない印象を受けるでしょう。

2019年の最低賃金、平均引き上げ率は5.3%

ベトナム政府が公表した2019年最低賃金は、地域別に設定されています。もっとも賃金の高いエリアが「地域1」とされ、ハノイ、ハイフォン、ホーチミンが含まれます。
 
次に高い「地域2」は、ダナン、バクニン省など、「地域3」はハナム省など、「地域4」はそれ以外です。最低賃金は前年のGDP成長率やCPI(消費者物価指数)上昇率、社会労働生産性向上率などの指標が参考とされ、前年の7〜8月にかけて、労働者代表の労働総同盟(VGCL)と使用者代表のベトナム商工会議所、そして政府の国家賃金評議会の三者の間で議論の末、合意に至りました。
 
近年の最低賃金上昇率が抑制されているのは、人件費の高騰を理由にベトナムへの進出を躊躇する外国企業が増えていることから、ベトナム政府は賃金上昇を抑えているためだという見方がなされています。従って、これらの数値はあくまでも法定であり、実際には多く支払われているというデータもあります。(表1)

外国直接投資とGDPの推移

90年代前半までのベトナムは、中国との国交正常化、日本によるODAの再開、ASEAN加盟、アメリカとの国交正常化と、政府開発援助と外国直接投資を積極的に受け入れる土台ができ、それに応じて急激な経済発展を遂げました。
 
1995年〜96年頃が第1次対越直接投資ブームと呼ばれ、その後、しばらく外国投資の低迷が続きましたが、2007年の世界貿易機構(WTO)加盟以降、再びベトナムへの投資はブームとなりました。
 
特に2008年には台湾からの大型案件を含む外国直接投資の認可額は700億ドルを超えており、近年では日本と韓国からの投資がそれぞfれ突出した動きを見せています。こうした外国からの直接投資は、農水産加工品や軽工業製品の輸出産業、輸出加工型産業の成長をもたらし、雇用の促進によって、GDPは増加し続けています。

貿易収支の推移


第一次の外国直接投資ブームで景気が過熱したことで、輸入インフレとドン安に見舞われ、2008年の物価上昇率は23%にまで上がりました。
 
その結果、所得が物価上昇に追いつかず、国民の不満は高まり、ストライキが頻発するようになるということが起こり、この教訓からベトナム政府は近年、経済の安定化を方針としています。その成果もあり、2012年の物価上昇率は前年の18.6%から9.2%に抑制されました。
 
2013年以降も一桁台に収まり、特に2015年は0.63%で2002年から2016年までの15年間で最低水準となりました。その後の物価上昇率もそれぞれ低い水準に収まっています。貿易収支もまた、2012年以降は概ね黒字に転換、2016年からは3年連続で黒字を計上し、現在に至るまで堅調な推移を見せています。(表2)

銀行取引と証券取引

2000年代に入ってから、それまでの企業間取引が商業銀行経由に移行し、ベトナムの商業銀行は大きく近代化されました。さらに2000年代半ば以降はベトナムの商業銀行の預金・融資の規模は急速な成長を見せ、与信取引が高成長したことにより、民間企業セクターの高成長を支えてきました。
 
2001年から2018年までの間における貸付金残高の年平均成長率は23%に達し、ベトナムの経済成長に大いに貢献しています。また、ベトナムの証券市場では、2000年にホーチミン証券取引所が、2005年にハノイ証券取引所が設立され、政府の管理下で運営されています。
 
2005年年初の時点で25社程度だった上場企業は、その後増加し、2019年1月現在では750社を超え、時価総額合計は1,300億ドル以上と言われています。
(出典:https://www.viet-kabu.com/qa/qa.php?qa=1)米中経済摩擦で進む生産移管
 
ベトナムは「全方位外交」を旨とし、諸外国、特に大国との関係にバランスをもたせることで自らの立場を守るという政策をとってきました。まず中国に関しては、支配と侵略を受けてきた歴史と近年でも南沙諸島等をめぐる摩擦があることから同国への国民感情は決して良好といえません。
 
しかし、近年は比較的安定した友好関係を保っており、中国は日本、韓国、香港、シンガポールに次ぐ対ベトナム投資国となっています。また、原材料をはじめとする最大の輸入元であり、同時に米国に次ぐ第二の輸出先となっています。
 
2018年以降、深刻化する米中貿易摩擦の影響で、アメリカへの輸出産業が関税障壁を避けるために生産拠点を中国からベトナムに移すという動きも一部に出ています。
 
アメリカは近年、ベトナムの産業にとって最大の輸出先となっており、2017年は415億ドル、およそ20%を占めています。中国からの生産移管は、今のところベトナム経済に悪い影響を与えていませんが、アメリカとの貿易黒字がこのまま拡大していけば、いずれ中国と同様の措置を取られる可能性もあります。ベトナムにとって中国、アメリカに対する外交および経済政策におけるバランスが求められています。

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