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「広域的な広がり」を持つベトナム南部の現状とは

製造業のみならず、様々な日系企業の進出が続くベトナム南部。周辺地域への広がりも顕著だと言います。日本貿易振興機構(ジェトロ)ホーチミン事務所の比良井慎司所長にお話を伺いました。


【取材協力】ジェトロ・ホーチミン事務所 所長 比良井 慎司氏(ひらい しんじ)ジェトロ・シンガポール事務所勤務(2006~2009年)、在トルコ日本大使館勤務(2011~2015年)等を経て2019年6月より現職

3つの特徴を持つ南部での日系企業の展開

目下のホーチミンを中心とするベトナム南部での日系企業の展開の特徴といえば、次の3つが挙げられます。まずは、中小企業から大企業まで「さまざまな規模の法人が進出していること」が最も大きな特徴でしょう。

次に、進出業種に多様性があることが挙げられます。もともとベトナムへの進出企業には製造業が多かったわけですが、最近では小売業、サービス業、ITコンサルなど、「いろいろな非製造業の企業が進出」して来ています。

さらに、地理的な進出先が「地域的な広がり」を見せています。以前ならホーチミンとその周辺地域に出て来るケースがほとんどでしたが、最近ではやや遠隔地への進出も増えています。

インフラの成熟度が左右
進出先は周辺の2省へ

南部において、日系の製造業各社の多くはインフラが比較的整備された工業団地へ進出しています。ホーチミン市内のほか、道路のインフラが比較的整っているビンズオン省やドンナイ省にまとまって進出している状況です。

ビンズオン省には東急グループが開発を進めている「ビンズン新都市」の近隣にイオンモールが建っている他、シンガポール系や台湾系のインターナショナルスクールもあり、邦人向けの生活環境も整いつつあります。

一方で、生活環境が整っていない地域への進出となると、日本人駐在者が暮らして行く上でなかなか条件が厳しいと思います。また、交通インフラは全体的に整っていないのが現状です。道路は改修され徐々に良くなってはきていますが、地方に行く幹線道路でもまだ片道1車線のところが少なくありません。

ただ、インフラの脆弱な都市へ進出後、進出先の開発が進み、改善したというケースもあります。

南部の自治体
日系企業の進出に期待

「地域的な広がり」がみられる中、地方の省や市は、積極的に日系企業の進出を求めています。例えば、先には直轄市のひとつ、カントー市 (ホーチミン市から170km)についてホーチミン市で投資説明会が行われたのですが、そこへ日系企業の関係者100人あまりが集まり、関心の高さを感じました。カントーへは現状、車で3時間半から4時間かかりますが、高速道路ができれば2時間程度まで短縮されます。

日本の各地方から進出
ホーチミン市の出先機関

「地域的広がり」といえば、ベトナム南部と関わる日本の出先機関が、全国のさまざまな場所から来ていることは注目すべきだと思います。

多くの都道府県ミッションがホーチミンを訪問されていますし、地方銀行がベトナムの地元金融機関でジャパンデスクを置いたりしています。つまり、大都市からだけではない、日本の地方からのベトナムへのアプローチが活発化しているのが特徴とも言えます。

調達環境に依然厳しさ
今後の変化に期待

南部における「原材料調達」に関わる環境は依然厳しいと感じます。日系企業から得たアンケート結果からも分かるように、ベトナムの現地調達率は4割を切っており、全体的に調達への難しさが残っています。例えば、中国のような製造業の大集積地帯はまだ生まれていませんし、周辺国にすばらしい部品供給地帯もありません。

当分は日本などから原材料や部品を運び込んで来て、こちらで組み立てるのが中心ではないかと考える一方、これが今後どう変化して行くかは期待したいところです。

一方、南部にあるローカル企業で調達先となり得るところが徐々に出て来ています。これらの会社は主にビンズオン省かドンナイ省を拠点としています。ちなみに、ホーチミン市では加工産業について、市内では公害問題や土地不足の問題もあり、新規設立が厳しくなっているという声を聞くほか、既存の工場も市政府の指導の結果、周辺省に移転、または移転を計画する例が出てきています。

中国からの進出も顕著
米中貿易摩擦は追い風か

米中貿易摩擦で中国内での生産が不透明になる中、新たな進出先を探そうと、これまでにない遠隔地への視察もずいぶんと入っています。また今年に入って、中国企業が次々とベトナムに進出して来る傾向も見られ、中国本土からのさまざまな投資が増える兆しが感じられます。今後はベトナム政府が外資企業の投資に際し環境保護などの観点から選別する方向性を示しており、どう具体化されるのかというのもひとつの課題になるかも知れません。

地域で異なる最低賃金
カンボジアはコスト高に

製造拠点として南部地域を選ぶ場合、賃金については注意深く見るべきでしょう。ベトナムの場合、地域によって最低賃金が異なっており、内陸部では都市部の6〜7割にとどまります。ですから、低廉な労働力が得られる場所が依然存在しますので、業種によっては若干インフラの条件が悪くても、進出先として有利かもしれません。

また一時期、ベトナム南部と国境を接するカンボジアへの進出を検討する企業もありました。しかし、ワーカークラスの最低賃金で比較するとプノンペンはハノイやホーチミン市とほぼ同レベル、企業運営に欠かせない中間管理職レベルの人材となるとベトナムの方がむしろ賃金水準が平均的に低いという状況となっています。電力供給や道路などのインフラを考えるとベトナムと比べて立ち後れ気味ですから、製造業の進出先としてはやはりベトナム国内のほうが未だ魅力的という状況だと思います。

信頼が高い日系企業
地元との交流も重要

多くの工業団地の誘致担当者は、日系企業による投資への期待について熱意を持って語ります。他の国でのこの手のやり取りとなると「他国の外国資本と天秤にかけているのだろうか?」と勘ぐったりしますが、ベトナムの場合はどうも「日本による投資は大切」と心から感じてくれているようです。環境保護への取り組みに積極的、人件費支払いへのトラブルはほぼ無いなど、社会的信用が固い、というのが日系企業に対する印象だと聞きます。都市部での生活経験を持つ若者が「長期的な信頼関係の下で働ける、地元に進出して来た日系企業に就職する」といった例もあります。

日本或いは日系企業が築き上げて来たベトナムの人々による信頼は大きいものがあります。こうした背景を踏まえて、積極的に地元の人材を登用する、あるいは地元企業との交流を図るといった方向性も大切かも知れません。

▶次は:データで読むベトナム経済|ベトナムはなぜ諸外国から注目されているのか

日本貿易振興機構(ジェトロ)ホーチミン事務所

住所 14F., Sun Wah Tower, 115 Nguyen Hue St., Dist. 1, HCMC
Website https://www.jetro.go.jp/
電話 +84-28-3821-9363 電話

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