ベトナム現地調達の現状


【取材】2019年11月
ジェトロ・ハノイ事務所 庄浩充リサーチ・ディレクター
参考資料:世界貿易投資報告2019版(ジェトロ)

現在、在越日系メーカー各社が直面している「現地調達への課題」はどのような状況でしょうか?日本貿易振興機構(JETRO)ハノイ事務所の庄浩充リサーチ・ディレクターにお話を伺いました。

当面の大きな課題は現地調達率の向上

ベトナム外国投資庁の統計では、2019年6月までに日本からの投資案件は累計4,190件で、そのうちの41%にあたる1,739件が製造業となっています。また、投資認可額ベースでは50%以上が製造業への投資です。このように日本からベトナムへの投資案件で大きな割合を占める製造業では、原材料や部品の現地調達率の向上はコスト削減にも直結する大きな課題です。しかし、ベトナムでは未だに日本などからの輸入品に依存しているのが現状と言えます。

進出企業の65% 「難しい」と回答

JETROが昨年(2018年)実施した「2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、ベトナムに進出している日系製造業各社のうち、58%が「原材料・部品の現地調達の難しさ」を生産面での問題点として挙げています。

これは、ベトナムでの現地調達率の低さがその厳しさを物語っています。「原材料・部品の調達先の内訳」にもあるように、日系企業の進出先ごとに現地調達率(金額ベース)を調べてみると、中国が圧倒的に高く66.3%、以下タイが57.2%、インドネシアが42%で、ベトナムは36.3%にとどまっています。つまり、ベトナムでの調達は依然として国外からの輸入に高く依存する格好となっています。

この数字を見ると、「調達率でインドネシアとベトナムの差が大きい」と感じられるかもしれません。インドネシアには従前より日系メーカーを中心に自動車企業が集積しており、関連の裾野産業が育ったため、ベトナムよりも調達率が高いと推察できます。

ベトナムも着々と現地調達率が上がっています。しかし、中国、タイ、インドネシアと比べて低く、アジア・オセアニア地域全体の日系企業の平均値(46.9%)を大きく下回っているという事実は受け入れなければならないでしょう。

在越日系メーカーが主「現地での調達先」

では、日系メーカー各社がベトナムで現地調達している原材料・部品などの調達先の内訳を見てみましょう。

「原材料・部品の現地調達先の内訳」によると2018年現在、「現地(在越)日系企業」からの調達が半数近い47.1%、さらに「外資企業」からの調達が13.3%あり、これらを足すと60%を超えます。一方、現地の地場企業からの調達率は39.7%しかありません。

ベトナムにおける調達先は日系企業が多いのはもちろん、その他の外資系企業も候補になるのがひとつの特徴と言えます。これは、製造業に関わる地場企業がまだ発展途上であることを示しています。ちなみに、中国に関する同様の調査結果を見てみると、ベトナムの数値とは反転し、地場企業からが6割を超えるのに対し、中国にある日系企業からの調達は3割程度にとどまっています。

在越日系企業に対し「今後の原材料・部品調達の方針」を尋ねたところ、「進出先での現地調達率を引き上げる」という回答が72%にも達する一方、「日本からの調達率を引き上げる」は7.8 %にとどまっています。このことからも、ベトナム国内で調達したいという志向は確実に高まっているといえるでしょう。

他国の外資系企業との連携がカギか

ベトナムには韓国企業をはじめ、日本以外の外資系企業の進出も進んでいます。調達をめぐっては、日系企業間でのやり取りだけでなく、他国の企業との連携もポイントになると考えられます。

目下のところ、在越日系企業の第三国企業の取引先として最も多いのは台湾企業となっています。しかし近年では韓国企業からの調達も確実に増えています。

第三国企業のベトナム展開というトピックでいえば、2019年に入ってから中国企業の進出が急速に増えています。中国企業とは販売や人材確保の面では競合するかもしれませんが、調達の面では日系企業にプラスに働くこともあります。一部では「中国国内で取引があった企業がベトナムに進出して来たことを受け、そこから調達を図る」という流れも出て来ています。

地場企業からの調達の可能性は

ベトナムは、原材料に使える資源が限られているため、現地で調達するモノとしては「部品」や「間接材」の割合がどうしても大きくなります。では、今後、地場企業からの調達率が上がる可能性はあるのでしょうか。

ベトナムにも、日本などの技術を学んで精度の高い製品を作るメーカーが誕生しつつあります。ただ、これら日系企業との取引がある地場企業にとっては、「納入元の選定に厳しい条件を付けているなど、なかなか現地の企業が調達先となるには越えなければならない数多くのハードルがある」という問題も生じています。

その結果、一部の産業では喜ばしくない事態も生じています。地場企業によっては、アメリカ企業や中国企業が委託して来る「大量、低めの精度」のオーダーを優先し生産する一方、「少量、高い精度」を求めて来る日系企業向けの仕事を後回しにするという判断を行っているといいます。つまり「ベトナム内調達が可能であるモノであっても取引条件が合わないため、現地調達ができない」ということも起こっているわけです。

ベトナムをめぐる調達環境は、今後、地場企業の成長がカギとなることは間違いありません。日本の製造業で働いて習得した技術・ノウハウをもとに起業するベトナム人も出てきています。それらの企業からの調達率を上げるには、技術協力だけでなく、それぞれ条件面の調整など、中長期でのビジネスにつながる信頼関係の構築も大事になってくると思います。

▶次は:ベトナムの輸出加工企業(EPE)とは?

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