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【ベトナムのシン層 | Vol.1】ザップ将軍と今日のベトナム 横綱米を倒した常道外の戦い

ディエンビエンフーへの攻撃の計画を報告するVo Nguyen Giap将軍

本記事は、ベトナムを独自の視点で解説するコーナーです。

NHK・BSPのドキュメンタリー番組「映像の世紀プレミアム第6回、アジア自由への戦い」では独立を夢見たインド国民軍のチャンドラ・ボース、香港の世界的カンフー俳優ブルース・リー、石油で米英と渡り合ったサウジアラビアのサウド国王、清朝復活を夢見た最後の皇帝溥儀と並んでベトナムのヴォー・グエン・ザップ将軍の生き様が見事に描かれている。

米首都ワシントン郊外にあるアーリントン戦没者墓地には米が関与した戦争で命を落とした兵士が眠っている。その一角に硫黄島で米国旗を建てようとする兵士の記念碑があり、土台周囲にこれまでの戦史が刻まれている。
その中で唯一の敗北がベトナム戦争であり、大量の武器弾薬、最新兵器、そして組織だった大部隊の米軍が、サンダル履きで神出鬼没のベトナム兵に負けたのだ。 その戦いを指導して「戦争の常道」を打ち破ったのがザップ将軍だった。

NHKの番組ではベトナム戦争に先立つフランス植民地軍との1954年のディエンビエンフーの戦いで、急峻な山に砲を上げ敵の意表を突く砲撃を実施したザップ将軍の奇策が紹介されている。
イスラム教原理組織タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧し、米軍のヘリで外国人やアフガン人が空路脱出する様子が最近報道で流れたが、その多くが1975年4月に陥落寸前の南ベトナム・サイゴンにある米大使館屋上からヘリで脱出する際の様子をオーバーラップさせて伝えていた。

米は決して公式に認めないだろうが、アフガンでの9・11テロ事件以来20年に渡る戦いは間違いなく「敗北」だろう、ベトナムに続く歴史的な。がっぷり四つに組んだ力相撲なら米軍はそれなりの力を発揮するだろうが、小兵や飛び道具、アッと驚く技を繰り出すかつての大相撲の「舞の海」や現役の「宇良」といった技ありの力士相手では米軍は大いに手こずることだろう。

横綱米国に対する勝利を成し遂げたベトナム、指導したザップ将軍。歴史的な大金星だった。今日のベトナムの平和はそうした過酷な歴史の、そして命を懸けた人々の所産であることを忘れないようにしたいものである。

執筆者:大塚智彦(フリーランス)
1957年生、毎日新聞ジャカルタ支局長、産経新聞ジャカルタ支局長などを経て2016年からフリーに。月刊誌やネット版ニューズウィーク、JBPress、現代ビジネス、東洋経済オンライン、Japan in depth などに東洋アジア情勢を執筆。

写真:Bao Dat Viet
※本コラムは、筆者の個人的見解を示すものであり、週刊ベッターの公式見解を反映しているものではありません。

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