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【第11回】ベトナム判例制度について 〜外国人は、ベトナム人の名義を借りて、ベトナムでの不動産を購入する場合、どう解決するか ベトナム判例NO. 02/2016/ALの分析〜

日系企業が注意すべき点
2015年12月に、ベトナム社会主義共和国で判例制度を始めて導入しました(1975年の全国統一前に北部と南部のそれぞれ法制度の中で「判例」の効力も認めました)。最高裁判所裁判官評議会が最初に公布された「判例の選定、公布及び適用の手続に関する議決2015年10月28日付のNO. 03/2015/NQ-HĐTP」に基づき、最高裁判所は、2016年4月6日に最初の6つの判例を公布し、現時点まで全部43判例を公布し、適用されています。
㊟最高裁判所裁判官評議会は、2019年6月18日に上記議決NO. 03/2015/NQ-HĐTPを更新する判例の選定、公布及び適用の手続に関する議決2015年10月28日付のNO. 04/2019/NQ-HĐTPを交付がされました。そのため、現在判例の選定、公布及び適用の手続は、新しい議決NO. 04/2019/NQ-HĐTPに従います。

公布された判例の中で、ベトナム人外国居住者がベトナム人の名義を借りて、ベトナムでの不動産を購入する場合の当該ベトナム人外国居住者の権利をどう保護するかを答える判例NO. 02/2016/ALがあります。

編集部
ベトナムの判例制度は、どのようなものでしょうか。
弁護士
ベトナムは、日本と同じで法系が大陸法です。そのため、まず大原則は、判例が法源ではなく、あくまで法を解釈するものとなります。これは、議決NO. 04/2019/NQ-HĐTPの2条1項により、「判例の選定基準は、異なる見解がある法令の定を明確にする;各争点又は法的事項の分析又は解釈により具体的事件において適用すべき原則、処理の方針又は法令の規範を指摘することができる;若しくは明記な法的な規範がない場合のおける衡平法を適用するとう価値のあるものを含む」という趣旨を規定しています。
編集部
なるほど。
判例の選定ですが、日本と少し異なっている気がしますね。
弁護士
ベトナムの判例制度がかなり特性があります。要するに既に効力を発生した裁判所が下した判決・決定(下級審裁判所の判決・決定も含まれています)は、判例としての選定基準を満たせれば、最高裁判所に判例の候補として提案し、その後最高裁判所裁判官評議会(の判例諮問評議会)の判断により、「判例」を選定し、交付することになります。最高裁判所裁判官評議会が判断する前に、判例の候補は、最高裁判所のポータルサイトに投稿し、専門家や実務経験者から意見等を収集する手続きがあります。
編集部
よくわかりました。ベトナムの判例って、外国人でも簡単に見れるのでしょうか。
弁護士
ベトナムの裁判所の一般の判決・決定は、1部公開していないのですが、判例は完全に公開しています。最高裁判所は、判例公布、判例の候補たる判決・決定の交付、意見収集等のために、判例用のポータルサイトを設置しています。
https://anle.toaan.gov.vn/webcenter/portal/anle/home
ただし、ベトナム語しかありませんね。

また、問題なのは、判例になった元データの判決・決定の品質です。ベトナムの判決の構成は、①事件の事実関係の記述→②裁判所の判断→③判決からなり、その中法の解釈がほとんどありません。そのため、なぜ裁判所がそのように判断し、判決されたのか判決を見て当然わかるわけではありません。ベトナム人専門家でもハードルが高いです。そのため、外国人は、判例自体を簡単に手に入れられますが、その判例の内容や判決の判旨を容易に理解できません。

編集部
なるほど。
参考のために、外国人が注目すべき判例を1つご紹介お願いします。
弁護士
はい。今日は、ベトナム人外国居住者がベトナム人の名義を借り、ベトナムでの不動産を購入した後ベトナム人の名義者が勝手に当該不動産を売却した時のベトナム人外国居住者とベトナム人名義者との紛争に関する判例(NO. 02/2016/AL)を紹介します。ベトナム人外国居住者は、外国人と同じ取り扱いのため、外国人の場合でも同じように適用することができます。

弁護士
判例の概要


i. Thanh氏は、ベトナム人外国定住のため、ベトナムでの農地の使用権を保有することができません。
ii. 1993年に、Thanh氏は、弟であるTam氏の名義を借りて、売主から21.99 テールの金(当時の約14万円程度)で農地を買いました。
iii. Tam氏は、Thanh氏の依頼を受けて、売主と売買契約を締結し、土地の使用権証明書も自分の名義で取得しました。
iv. 土地の使用権証明書を取得した後、2004年にTam 氏は、第三者であるMinh Chau会社に当該土地を売却しました。Minh Chau会社から約600万円の代金をTam氏に支払いました。
v. Thanh氏は、Tamを提訴し、Minh Chau会社から支払われた600万円を請求しました。

【第一審の判決】
o Thanh氏の一部の請求を認め、Tam氏に対して600万円の半分である300万円程度をThanh氏に返還するように判決を下しました。

第一審の判決に対して、Thanh 氏もTam氏も納得せず、第二審に不服申立をしました。

【第二審の判決】
o Thanh氏の請求を否定しました。
o Tam氏がThanh氏に対して21.99 テールの金に該当する14万円程度の金額を返還するようにする必要があります。
o 600万円から上記の14万円程度の金額を引いた後の586万円程度については、国の予算に没収します。

Thanh氏もTam氏も納得せず、最高人民裁判所に不服申立を行いました。

【最高人民裁判所の判決】
o Thanh氏は、ベトナム人外国定住者のため、ベトナムでの農地を所有することができません。しかし、21.99 テールの金を土地に出資する金額とみなし、Minh Chau会社に売却した時の金額の一部を受ける権利があります。
o 「600万円から上記の14万円程度の金額を引いた後の586万円程度については、国の予算に没収する」という第二審の判断は妥当ではありません。
o Tam氏が出資した21.99 テールの金に該当する金額をThanh氏に返還するように要求しない第一審の判断は、妥当ではありません。

したがって、第一審の判決を取り消し、第一審を再度行うように判断されました。

【判例の内容(最高人民裁判所の判断の内容)】
Thanh氏は土地取得のために 21.99 テールの金(約27.047.700ドンに相当する)を支払いましたが、譲渡に関する書類の名義は Tam氏でした。かつ、土地取得後、Tam氏が土地を管理し、その後、他の者に譲渡しました。

よって、本来ならTam氏は土地の保管、価値維持、価値向上に改善した労力があり、それにより、Tam氏に対して当該労力に相当する金額を分割すると判断する方が正確で、各当事者の合理的な権利を保護することができます。(Tam氏の労力を正確に確定することができない場合、Thanh氏と Tam氏の労力が同等であることをみなし、分割する必要があります)。

編集部
上記の判例を見て、弁護士としてコメントいただきますでしょうか。
弁護士
ベトナム人外国定住者(外国人と同様に取り扱う)は、ベトナムで農地のみならず、一般の土地の使用権も取得することができません。そのため、ベトナム人から名義を借りて、ベトナムで土地の使用権や一軒家住宅の所有権を実質的に取得するケースが多いです。上記の判例が公表される前までは、このような名義借りの契約を認めず、かつベトナム人外国定住者若しくは外国人の権利を保護しないという裁判所の判断が多かったです。

しかしながら、前半に述べた通り、ベトナム人外国定住者や外国人がベトナム人の名義を借りて、土地を購入する件数が多く、かつこの十年近くの間に、ベトナム人外国定住者や外国人に対するベトナムでの不動産の取得に関する規制が緩和される傾向があります。このような背景の下で、判例No. 02/2016/ALが生み出されました。

弁護士
判例No. 02/2016/ALの通りに、最高人民裁判所は、名義借り契約を投資委託契約と同じように取り扱い、ベトナム人外国定住者の農地の使用権を認めませんが、土地に出資した金額の利益を認めることになりました。本判例は、ベトナム人外国定住者若しくは外国人と名義貸人であるベトナム人との間の土地の使用権に関する紛争事件に対して、非常に大きな意義を有します。
弁護士
もちろん名義借りを推奨するわけではないが、この判例を見て勉強できるのは、
①名義借りは、必ず違法ではない、
②名義借りでベトナムでの不動産を取得する際に、不動産の所有権を認めない可能性があるが、当該不動産の価値の帰属を認めること、
③名義借りをするベトナム人外国定住者や外国人は、名義貸人と合意する際に、必ず名義貸人の役割や受け取る利益額を明確にする必要があることとなります(合意しない場合は、判例の通りに五分五分で分かち合うことになります)。
編集部
ありがとうございました。
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ベトナム明倫国際法律事務所

今回の執筆者

弁護士・調停人 
ブイ・ホン・ズオン(DUONG)
duongbui@meilin-law.jp 
・日経企業への法務サポート経験訳7年間。日本語堪能

ベトナム常駐弁護士
原 智輝(はら ともき)
t-hara@meilin-law.jp 
・日系企業への法務サポート経験2年間、日本語・英語堪能

ホーチミン事務所代表弁護士
盛 一也(もり かずや)
k-mori@meilin-law.jp 
・税務支援経験3年間、日系企業への法務サーポート経験3年間、日本語・英語堪能
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