ベトナムの不動産を「購入」する|規制や支払いプロセスなど

取材協力
CAST LAW VIETNAM CO., LTD.
代表弁護士 工藤 拓人 氏(ホーチミン市)
N-ASSET VIETNAM CO., LTD.
代表取締役 西村 武将 氏(ホーチミン市)
Tonkin Real Estate Corporation
代表取締役 村尾 駿 氏(ハノイ)

取材:2019年11月

外国人が購入する際の規制

2015年7月、不動産事業法、住宅法が一部改正され、外国人・外国組織に対する規制も緩和されました。これにより、外国人によるベトナム国内の不動産購入のハードルが低くなり容易に検討できるようになりました。しかし、外国人や外国組織が何でも自由に購入できるということはなく、購入目的や保有期間などに制限があります。

不動産の購入目的や運用条件

不動産を購入する場合、購入可否や条件が異なってきますので「外国人」「外国組織」「外国企業」の3分類に分けて考える必要があります。

外国人による不動産保有可能期間

外国人や外国法人による物件の買い占め、それによる不動産の高騰を防ぐため、いくつかの制限が存在しています。コンドミニアム(マンション)では、建物1棟(開発規模により、ユニット、ブロック等の場合あり)当たり、外国人の所有戸数は総戸数の30%を超えてはならないという決まりがあります。

また、別荘・連結住宅等を含む個別住宅(いわゆる一軒家)の場合は、一つのWard (坊)レベルの行政区画内で開発されたプロジェクト当たり、外国人所有戸数は当該プロジェクトの総戸数の10%または 250 戸までのいずれか少ない戸数までと決まっています。

外国人や法人が住宅を所有することができる期間の上限は、証明書の発給を受けた日から 50 年です。なお、最大 50 年間で1回延長することができます。外国人がベトナム人(海外に住んでいるベトナム人を含む)と結婚している場合には、50年までといった制限の対象にはなりません。

一方、法人など外国組織が住宅を所有できる期間の上限は、外国組織に対して発給された投資登録証明書または企業登録証明書に記載された期限とされています。投資登録証明書の期間が延長された場合には、住宅を所有できる期間もそれに合わせて延長されますが、延長は 1 回までとされています。

ベトナム不動産の予約・支払方法

支払方法と支払いスケジュール

◎実際の支払いスケジュール(物件を購入した際の覚書の一部)
この物件のケースでは、予約金が200,000,000ドンで、その後、最初の支払いでは5%分の代金から予約金を差し引いた金額の払い込みとなっています。30%分を払い込むタイミングで売買契約書への署名(Ky Hop Dong Mua Ban)となっています。

不動産物件を購入する際の、支払いスケジュールについては、販売者(ディベロッパーや現所有者)との契約次第となり、ケースバイケースとなります。しかし、不動産事業法で決められている一定の制限に従わねばなりません。

外国人がベトナムで不動産を購入する場合、多くの人が分割払いによる支払いをすることになります。

通常プレビルド(竣工前)物件の場合、購入時点から部屋の引き渡し前までに70%(外国資本のディベロッパーの場合50%)を支払うこととなり、2~3か月に一度のインストールメント(分割払い)をしていくケースが多いです。また、引渡のための条件で総額95%までを追加で支払い、残りの5%はピンクブックと呼ばれる所有権証明書の発行後となります。

ベトナム国内口座からの振込の必要性

ベトナムで住宅を購入する場合、非居住者であっても原則ベトナムに銀行口座を開設する必要があり、購入金額の支払い、賃料の受け取り、売却代金の受け取りはこの口座で行う必要があります。ベトナム国内での銀行口座開設については、各不動産エージェントがサポートしている場合もあるため、相談してみるとよいでしょう。

不動産購入のフロー

以下は、物件購入フローの一例です。物件によって異なる場合も多いです。

予約金

ディベロッパーやエージェントから事前に販売会(抽選会)のお知らせが届き、購入を希望する場合には予約金をデポジットすることになります。通常、1口50,000,000ドン~500,000,000ドンまで幅があり、高級物件だと200,000,000VNDとしているケースが多いです。人気プロジェクトの場合には、当選確率を上げる為に何口も予約金を納める人もいます。
なお、抽選会にて当選した場合は、初回の物件購入代金の支払いから予約金で納めておいた金額が差し引かれます。抽選に外れてしまった場合は、予約金は返金されます。

購入と支払のフロー

抽選会にて購入権を得た場合、デポジットに関する覚書に署名します。その後、合意した諸条件の完了後に売買契約書(SPA)への署名となります。通常、上物の完成までに70(外国資本のディベロッパーの場合50%)、最終的に部屋の引き渡しまでに95%分を払い込むことになります。最後の5%はピンクブックと呼ばれる所有権証明書が発行された後に支払うことになります。これらの支払のフローに大きな相違がある場合、違法な取り扱いをしているプロジェクト・業者の可能性もありますので、複数の仲介会社に相談して真偽を確かめた方がよいでしょう。

実例:購入者の声
<書類の保管>
「部屋の引き渡しの際にレイアウト図など多くの書類に署名することになります。こちらの書類は売却時に必須です。私はこの書類の一部を紛失してしまったために売却時にはディベロッパーに再発行の依頼をするなど非常に手間がかかってしまいました」

竣工前物件に対する支払規定

プレビルドと呼ばれる竣工前の物件への支払いについては、初回の支払いは「購入金額の30%を超えてはならない」とされています。その後も建築状況によって支払いを進めますが、「上物の完成前に 70%を超える支払いを受けてはならない」とされています。

土地使用権・資産所有権証明書(ピンクブック)が発行されていない場合には、「95%を超える支払いを受けてはならない」と規定されています(不動産事業法第 57 条参照)。
これまでは、上記規制がある中でも、商慣習としてデベロッパーが制限以上の支払いを割引などのプレミアムを付けて推奨するケースが多かったのですが、直近では当局の監視もあり、規制通りの支払いを遵守する傾向と言われています。

実例:購入者の声
<支払いの一時停止>
「ホーチミン市2区で計画されているプレビルド物件を購入しました。30%分の支払いが完了した時点で、売買契約書の締結を待っていましたが、ディベロッパーが建設ライセンスがまだおりていないという理由で、それ以上の支払いの一時停止と売買契約書署名の延期が通告されました。ライセンスが発行された後に売買契約書へ署名をして、支払いが再開されました」

竣工済み物件購入(中古物件)の際の支払ターム

竣工済物件には上記の規制が適用されません。したがって、売買代金の支払いスケジュールは当事者間の合意によって決めることになります。規定では、当事者間で支払いスケジュールについて別段の合意がなされない場合、ピンクブックが発行されるまでは、95%を超える支払いを受けてはならないと規定されています(不動産事業法第21条第2項)

取得時に必要な税金や費用

不動産取得時に課せられる税金や手数料は以下のルールにて決められています。買主か売主かのどちらが負担するかについても習慣がありますので、具体的な詳細は仲介会社に尋ねると良いでしょう。

●付加価値税(VAT)

不動産の取得時には、10%の付加価値税(VAT)が課されます。一般的に住宅に対する付加価値は、住宅価格 – 土地使用権の譲渡価格の10%が課税されます。通常は買主が負担します。

●所有権の登録手数料

所有権を登録する際に、財産の取得に関する少額の登録手数料が発生します(政令45/2011/N?-CP)。所有権の登録税ともいい、その物件をこれから所有する側に支払い義務があります。住宅の場合における登録手数料額は、不動産取得金額とは直接の関係がなく、地方の人民委員会が一定時期ごとに発表する価額表に基づく価額の0.5%の金額とされています。

部屋の引き渡し

引き渡し時に渡される図面。ここに実際の面積などが記載されている

部屋の引き渡しは、ディベロッパーの担当者や仲介会社の担当者が立ち合いのもと行われます。その際に、設備の確認や面積について説明が行われます。実際に部屋面積が購入時の契約書に記されたものよりも小さくなる場合、ディベロッパーから差額を返金してもらえるケースもあります。

また、引き渡し時に受け取る書類は、将来的に部屋を売却する際には必ず必要となりますので、紛失しないよう大切に保管しましょう。万が一、紛失してしまうと再発行には公安への届け出などが必要になることもあり、非常に手間と時間がかかってしまいます。

登記簿としての役割を果たす ピンクブック

土地使用権・住宅を取得すると、土地登記事務所において住宅の概要および敷地に関する情報を記載した土地使用権・資産所有権証明書が発行されます。この証明書は、ピンク色の紙が使われているため、通称「ピンクブック」と呼ばれています。

ピンクブックの記載内容

ピンクブックは、敷地の使用権証明書と一体のものとなっています。外国人の住宅については、敷地の土地使用権だけを取得することができないため、住宅を取得した場合には、ピンクブックに住宅の概要とその敷地の土地使用権の一部の情報が記載されることになります。なお、事業用地として土地使用権を取得する場合にも必要です。なお、土地使用権者と建物所有者が異なる場合には、土地使用者と建物所有者のそれぞれにピンクブックが発行されます。

ピンクブックに記載される情報

  1. 土地使用者、住宅および土地に付随する他の資産所有者
  2. ※当初の使用者・所有者名、事業登録番号、住所等が記載

  3. 土地の区画、住宅および土地に付随する他の資産
    • 土地の区画
    • ※土地の住所、面積、使用目的、使用期間、使用する根拠などが記載

    • 住宅
    • ※土地上の住宅の情報が記載

    • 他の建設工事
    • ※工場など、住宅以外の建築物の情報について記載

    • 植林である生産森林
    • 多年生植物
  4. 土地ロット、住宅およびの土地に付随する他の資産の地図
  5. ※土地や住宅等の図面が記載

  6. 証明書発行後の変更
  7. ※証明書発行後の権利関係の変動およびその日付が記載

レッドブックとピンクブックの違い

かつて、土地使用権と住宅および土地に付随する他の資産の所有権の登記制度は別々に運用されていました。その当時、土地使用権を証明する土地使用権証明書は、カバーが赤かったため「レッドブック」と呼ばれていました。

現在では、土地使用権・資産所有権証明書(ピンクブック)として、これらの権利が同一人物に帰属する限り、これら権利の情報は一つの登記上に記載され、土地使用権も建物も同一の土地登記事務所での対応がなされています。

この点、現在でも旧制度に基づくレッドブックは有効です。したがってレッドブックからピンクブックに切り替わっていない土地使用権は現在も多く存在し、両制度が併存しています。なお、現在の土地使用権・資産所有権証明書を指してレッドブックと呼ぶこともありますので、注意が必要です。

ピンクブック
レッドブック

ピンクブックの閲覧

不動産登記情報のデータベース上での閲覧制度は存在していません。登記情報を知りたい場合には、土地登記事務所に足を運んで閲覧請求を行う必要があります。

ベトナムの民法では「不動産である財産に対する所有権、その他の権利は、本法および財産登記に関する法令の規定に基づき登記される」と規定されており、また、その登記は公開されなければならないこととされています。

購入資金の調達

ベトナムでの不動産購入に当たって、資金はどう調達すべきでしょうか。現地でのローン組み立ての可能性はあり得るのでしょうか。

現地金融での住宅ローン

法律上は外国人個人がベトナムでローンを組むことが可能とされていますが、ほとんどの金融機関では、住宅ローンを含めて外国人個人に対するローンの取扱いがなされていません。

最大の問題はベトナムの金利が高いことです。住宅ローンであっても金利は約10%に上るため、外国人投資家にとって、ベトナムでローンを組んだ上で物件を購入するのは現実的ではありません。

銀行保証の取り付け

プレビルドと呼ばれる竣工前の物件を売却する場合、ディベロッパーは買主がすでに支払った金額を担保するために銀行保証を付けなければならず、銀行保証契約書の写しを購入者に送付しなければならないとされています(不動産事業法第 56 条)。もっとも、実際にはこのような銀行保証なしに契約が進むプロジェクトも存在します。

契約上解決しておきたい 諸手続き

売主の情報の確認

不動産の購入にあたり売主とされる人が権利を有しているかどうか、真の権利者であるかどうかについては、確実に確認することが必要です。

これについては、土地使用権・資産所有権証明書の記載情報と売主とされる人のパスポート等のID カードを照合することによって確認することが可能です。

解決すべき紛争が起きた場合

今後、ベトナムにおける不動産取引件数が増える中、ディベロッパーと外国人の購入者との間や、転売の際の買主売主との間、貸主・借主との間での紛争が増加していくものと考えられます。紛争解決方法として、次のような形態が考えられます。

  1. ベトナム国内の裁判所における裁判
  2. ベトナム国内の仲裁機関における仲裁
  3. 外国の裁判所における裁判
  4. 外国の仲裁機関における仲裁

なお、不動産を対象とする契約の場合、不動産に対する所有権、その他の権利移転、不動産賃借または義務履行のための不動産の使用に対する適用法令は、不動産所在地の国の法令となることが規定されていることから、ベトナムの不動産についてベトナムで紛争解決を行う場合には、ベトナム法が準拠法となります。

ベトナムと日本では裁判の承認および執行について規定する条約が締結されていないため、日本で訴訟を行ったとしても、ベトナム国内において日本の判決を執行できない状況です。

外国仲裁判断の執行

仲裁であれば、ベトナムは「外国仲裁判断の承認および執行に関する条約」(いわゆる「ニューヨーク条約」)に加盟しているため、外国での仲裁判断をベトナム国内で執行することが可能です。実際に執行が行われた例も存在します。
そのため、紛争解決方法としては、仲裁をベトナムまたは日本などの外国で行うか、ベトナムで裁判をするかのいずれかの方法が考えられます。

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